36.8℃の微熱。
 
キュッと下唇を噛んで、押し寄せてくる胸の痛みに耐える。

あたしの行動がユカ様に誤解を生ませて、それで王子が苦しんで。

先生に対しても同じこと、あたしが行き過ぎたことをしたから、きっと罰が当たったんだ。


「なぁ、茜・・・・何考えてる?」

「え?」


聞かれて、ハッと顔を上げる。

あたし今、何を考えていた?


「目、泣き腫らした目だよね」

「・・・・」

「何かあったのは分かる、だからって変なことは考えんな。酷なこと言うようだけど、茜が迷うとみんな迷う。だから、な?」

「・・・・うん、分かってる」


今日も王子は鋭いなぁ。

あたしの気持ちの先を読んで、間違った方向へ進みそうなところをうまく軌道修正してくれる。

それがどういうところから来るものなのか、いくら鈍感なあたしだって感じていないわけじゃない。

でも聞かない、聞いてはダメ。


「じゃあ宇佐美さんトコ戻りな。そろそろバンビが来る頃だよ」

「うん」


そうしてあたしは王子に背中を押されてユカ様のところへ戻った。
 

< 477 / 555 >

この作品をシェア

pagetop