少女A。

袖を捲ったセーラー服を着ているあたしは、明るい声がしている校庭の真ん中で明らかに浮いていた。

周りの人達は皆体操着を着ている。

あたしは汗をかきながら、ただ見学者という位置付けを忠実に守っていた。


「整列ー!」

体育教師のかすれた声を聞くと、散らばってたのが一斉に束になる。

あたしはこの瞬間が嫌いだ。

なんだか見かけだけのまとまりのような気がして。

一つの集まりにして何が面白いんだろう。
同じことをやらせて何か意味があるんだろうか。

見学者というのは、整列のとき必ず先生の隣にいなければいけない。

皆に無条件で注目されるのも、嫌いだった。


「じゃあ今日は前回に続いてサッカーをします。各自ボールを持ってきてください」

分厚いファイルを見ながら先生が指示を出す。

校庭でただ一人、真っ赤なジャージ。
空から見ると、白黒の中の紅一点だ。






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