蝉時雨を追いかけて
浮気
「なあ拓海ィ、ここがわからないわァ」


 おかっぱがベッドの上で気持ち悪い甘えた声を出す。

別にいかがわしいことをしているわけではない。

むしろ、一瞬想像してしまったおれを全力で殴ってほしいくらいだ。


 学校は中間のテスト期間に入っていた。そのため、部活も強制的に休みとなる。

いつもならば部活をしてる時間だが、おかっぱが「拓海と一緒に勉強したいわ」と吐きたくなるようなセリフをはいたので、しかたなくおれの部屋に呼んだのだ。


「それより、なんでおまえはテニスの本なんか読んでるんだよ。勉強しようって言いだしたのはおかっぱだろうが」


「オレは毎日勉強してるから、いまさら慌てなくてもダイジョブなのよ」


 信じがたいことだが、おかっぱは驚くほどに頭がいい。毎回成績は学年で一番。

この高校にも、推薦枠でお金も払わず通っているらしい。


「それはうらやましいかぎりなんだが、それならなぜ勉強しようと言いだしたんだ」
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