蝉時雨を追いかけて
HN.NATTO
 5月の終わりから中間テストがあり、6月に入ってからはテニス部の練習も再開された。

だけど、拓馬は学校へこない。

それまで一度も学校を休んだことのない拓馬が突然学校へこなくなったことで、おれは拓馬の担任に何度も話を聞かれたし、担任が家にくることもあった。

それでも拓馬は学校へこない。

それどころか、おれとも両親とも話をせず、部屋から出てくることもないのだ。


 テニス部の顧問であるゲジは、放っておけばいつかは出てくるだろうと思っているのか、なにかを言ってくることはない。

拓馬のことを聞かれることに飽き飽きしていたおれにとっては助かったが、まったくなにもしないのも、教師としてどうなのかと思う。
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