蝉時雨を追いかけて
嫌われた人
 北村麗華の現状を知ってから二週間がたったが、やはりおれは話しかけることができずにいた。

自分の勇気のなさに嫌気がさす。

もう何度か話をしたことはあるのに、いまだに自分から話しかけるのは緊張してしまって、難しい。

北村麗華の問題は時間が解決してくれるものではないから、すこしでも早く彼女と話をしなければならないのだが。


「オイ拓海、マネージャーとは話したの?」


 おかっぱが耳元でささやいてくる。

昼休み、おれはおかっぱとふたりで職員室に向かっていた。

テニス部顧問のゲジに呼び出されたのだ。


「しつこいな、おかっぱ。毎日同じことばっかり聞いてくるな。まだ話はしてないよ」


「ダメな男ねェ。それにしても、ゲジのヤツ、なんの用かしら」


「さあ、なんだろうな」
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