MH
周囲の空気が重さを増す。

そう感じるほどに張り詰めた。

ピリピリと痺れるような緊張感の中、二人の異形の者が睨み合う。

「MHⅡ…君の頭脳にもプログラムしてあるだろう。機関は反逆者を絶対に許さない。その存在の秘匿の為、他の構成員の見せしめの為…反逆者は必ず始末する。機関の技術の粋を集めて生み出された君も、例外ではない」

「……」

無機質な、まさしく昆虫の如き感情を感じさせないMHⅡの顔。

その顔に、僅かに表情が浮かんだような気がした。

憂いの表情。

そして、憤怒の表情。

「俺は…もう人間には戻れないんだろうな…化け物に作り替えられ、一生この薄気味悪い体のまま生きていかなきゃならない…名前すら知らないような金属や薬品や人工物を埋め込まれた体…いつまで生きられるのか分からないし、生き延びたとしても、まともな老いなんて来ないだろう…だから」

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