ラグナレク
「けど―――」








そのいたって生真面目な口調は、寸前の諧謔を弄するかのようなそれとは、打って変わり異なるものだった。
僕とバリーの視線が、彼女へと集中する。








「―――けど、貴方以上にとんでもないのがこの場に居るというのも事実よ、レイ。さっき部屋の外で会ったアイツ―――ターレス・ペルソーンは、敵全機を撃墜しているわ。………それも、損傷をかなり押さえた上でね」

「………それ、マジ?」








必死に搾り上げたとでも言わんばかりに掠れた声で、バリーは尋ねた。それに対し、クレイは「大マジよ」とコンマ一秒かという恐るべき反応速度を以て答えてみせる。顎が外れやしないかと心配になるくらいに大きく開いた彼の口をしけしげと眺めつつ、僕は記憶にあるターレスという名の男の事を思い出していた。




―――彼は、僕の名を一言一句間違わず、ピタリと言い当ててみせた。
それに、あの口調。気のせいかも解らないが、どこと無く昔から僕の事を知っていたかのような、親愛さを帯びた話し方をしていた。




………一体、何故?
あーでもない、こーでもないと脳の中枢から隅までにかけて記憶の整理を行ってみるも、結局「これだ!」と納得のいく答が出ないままにその作業は終了した。
僕は使いすぎてエンスト気味の頭をパリパリと掻きながら、暫くの間続いていた沈黙を打ち破った。








「………出来たら、ターレスさんは敵に回したくないねぇ………苦戦しそうだ」

「それを言うなら、負けそうだ、とかでしょ。記録だけ見れば、完全に彼の方が貴方よりも上手よ」








確かに、と僕は苦笑しながら、また後頭部を掻いてみせた。

―――そりゃあ四機撃墜の後、自機を大破させた僕と、被害を最小限に抑えながら全機撃墜をやってのけたターレスさんとじゃ、勝敗は目に見えてるよな。クレイがそう思うのも仕方ない………けど。




―――僕だって、『あれ』さえなければ、もしかしたら―――いやいやいや。

僕はそこまで考えて、湧出した希望を即座に打ち消した。
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