<超短編>月との距離。
埋まらない距離。
彼を好きだった。
今は別に大事な大事な人がいる。
でも、たしかに、私は彼を好きだった。
過去形だけど、紛れもない事実。

私と彼は別れた。
月日が経った。
今の大事な人とあった。
それでも、彼を忘れることができない。
恋心は枯れても、彼の声も思い出せなくても、
なぜか、彼が忘れられない。

もう一度、彼にかかわりたい。
友人知人として関わりたい。
燃やしてしまった思い出は戻らないけど、
新しく思い出をつくりたい。
その知識、感覚は、私を刺激してくれる。
彼にかわる、知識や刺激を与えてくれる人にまだ逢えない。

だから、私はギターを抱えることにした。
彼はギターを弾いた。
同じ様な音楽をやっていれば、
また、どこかで会えるかもしれない。

毎日弾いた。
ライブとかするようにもなった。

また、季節が巡り、春になった。
とあるフェスで、私は彼を見かけた。

客じゃなくて、
ステージにいた。

満月だった。
彼はMCで、月が毎年3センチずつ遠ざかる話をして、
そんな歌を歌った。

私にとって、
彼はまさに、月だった。
いつまでも、3センチだけ届かない。

それでも毎日ギターを弾く。
3センチをうめるために。
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