最後の恋はアナタの隣で
「さっきと同じオレンジジュースで良いでしょ?」

再び喚いた私にそう言って立ち上がった千秋は、空になったグラスを持って踵を返し、私の対面に見えるバーカウンターに向かって歩いて行く。


そして、オレンジジュースとホットコーヒーを淹れてボックス席に戻って来ると、私にオレンジジュースを手渡して参考書に目を通し始めた。


骨張った長い指でパラパラとページを捲る伏し目がちの綺麗な顔に、ハラリと落ちる前髪。


漆黒のその髪の毛はサラサラしてて――触ったら凄く気持ち良さそう。


そう思いボーッと千秋の事を見つめていたら、


「……どうしたの? 疲れちゃった?」

急に顔を上げた千秋と視線がぶつかった。


「いや、気持ち良さそうだなって思って。千秋の髪の毛」

私は何も考えずに素直にそう答える。
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