大阪解体
「川口さん、いま議会では、この不景気をなんとか打破すべく有効な政策がないか意見が交わされている最中です。ですが、国民不在のまま政治家たちだけで物事を決めてよいものか私の心に疑問が生じまして。もしよろしければ、政治に対する要望でも、なにかこうした方がいいという政策でも、アナタの忌憚ないご意見をお聞かせ願えないでしょうか」
「ぎょっ、御意ィ!」
川口は片膝を地面についたまま、携帯電話を持っていないほうの手を胸にあてて頭をたれた。
「ままー、あの人へんー」「こら、指さすんじゃありません」
買い物帰りの親子や、サラリーマンや学生、道行く人々が川口を怪訝な顔で見ながら通り過ぎる。
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