バラバラ死体とシャルウィーダンス




逆さに見える視界に、フジハラさんの姿が現れた。


「ゴメンな、玄関のドア壊しちゃった」


全く反省してないのだろう、フジハラさんはヘラヘラ笑いながら、


「………っ」


宮崎クロエに拳銃を向けた。


「よ、久しぶりー」

「アンタ………!」

「今度は、ちゃんと注意してこんなの向けてるけど、キミが大人しく捕まってくれたら何の問題も無いよ」

「馬鹿のクセに、ちゃんと学習はするんですね」

「馬鹿は余計だっつの」

「フジハラさん!」


私は叫んだ。


頭に血が上って、意識が薄れていた。

出した叫びは、びっくりするほどかすれていて、声量もそれほど無かった。



気持悪い。



「あ? おう、忘れてた。……―――美幸ー」

「ほい!」


物置のドアから、美幸ちゃんを含んだ集団が、雪崩れ込んで来た。



「やったね裕子さん! 囮グッジョブ!」

「う………あ、り、がと……」


私に親指を立てて見せた美幸ちゃんは、私を助けようともせずに、



「ほれ」

「うん」


フジハラさんから警察手帳を受け取り、


「ぬーっ!」


背伸びして、それをカメラに写した。
おそらく、すぐにアクセスする人が居なくなるだろう。



「大丈夫?」



フジハラさんの奥さんが来て、私を抱えてくれた。


入り口のレバーの前にいた人間が、それを確認した後、レバーを下げる。


ゆっくりと鎖が下がり始め、徐徐に体が逆吊りから解放されていく。



「かーちゃん、鍵コレじゃね?」



パソコンを見ていた美幸ちゃんが、脇にあった鍵を奥さんに投げた。



「どーも」



奥さんはそれを受け取った。




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