花が咲く頃にいた君と
「あたしを助けたら、お金が手に入る…」


どこかで聞いた話だ。


「じゃなきゃ、お前なんか誰が助けるかよ。

もしもあそこがお前にとっての地獄なら、俺はお前を永久にあそこに閉じ込めておきたかった」



話が切りのいいところで、車は急停車した。


突然のことに、体が前のめりになり前の座席へ弾かれた。



乱暴な運転に、ちらりと運転席へ視線を走らせる。


「初川さん…!」


バックミラー越しに、目が合ったのは見知った老人だった。



「着いたぞ」


ガラリと車の扉は開かれ、眩しい外は、大きな大学病院の前だった。



「柊、ごめんね。
ちゃんと“地獄”に落ちるから」


あたしは車を降りる際、柊へ呟いた。


表情は見ない。

もうこれ以上、憎悪に歪む顔を見たくない。



あたしのワガママ。




地面に降り立ち

ふわりとスカートが揺れた。


久しぶり外はとても穏やかな世界だった。




「おかえり、結女」



真っ直ぐな病院へ続く道。



会いたくて、会いたくて、会いたくてたまらなかった人が


…――東向日がそこに立っていた。


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