花が咲く頃にいた君と
大切な人

白の病室

病院の中はわりと綺麗だった。


消毒液の匂いも、病院独特の暗い雰囲気もここにはない。


両側に伸びたエスカレート

広々とした待合室


病院には似つかわしくない子供のはしゃぐ声

車椅子を押す看護師さん


なんだか病院とは思えないほど、穏やかな空間だった。


吹き抜けのピロティ、見上げて見ると


ステンドグラスがキラキラと光を浴びて、ピロティの床を七色に染めた。


とても綺麗で、思わず立ち止まって見居ってしまった。



“結女ちゃん、あれがステンドグラスだよ”



女の子の声がした。


ちょっとはしゃいだような女の子の声。

慌てて振り返ってみるけど、その姿はなく


真っ直ぐ伸びる白い廊下だけが続いていた。



「………知ってる」



真っ白な廊下、ジッと見つめて呟いた。


はっきりと思い出せるほどではない記憶。

けれど体はちゃんと覚えている。



「結女?」

「行かなきゃ…」


胸の前で、ぎゅっと拳を握りあたしは歩き出す。

東向日が向かおうとする反対の方へ。



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