花が咲く頃にいた君と
白磁の細い指が、あたしの涙を拭ってくれる。


スマートにそんなことをする東向日が、恥ずかしい。



「お父さんが好きなんだね」


いつもなら“好きなわけないでしょうが”なんて即座で否定するのに。


今は素直に頷いてしまう。



十夜、十夜、十夜、


捨てないって言ったのに


何であたしを、捨てたの?




今まで気付かない様にしていた疑問が、沸き上がってきては涙に変わる。


「お父さんと君を引き離してごめん。

全部僕が悪いから、僕を恨んでくれればいい」


握られた手が温かくて、優しくて、彼の悲しそうな声に、無条件で首を横に振った。


「君は僕を恨んだらいいんだよ」


あたしの顔を覗き込んで、流れる涙をゴシゴシと乱暴に拭うあたしの手を絡め取った。



「お願いだから、泣かないで」


そのまま、東向日に押されて、ふかふかのベッドに身体が埋まった。


視界が反転して、見えるのはクリーム色の天井とあたしを覗き込む東向日。


絡めとられた手はベッドに、やんわりと縫い付けられた。



押し倒されている。
そんな自覚はあったけど、涙で歪む視界にそれどころではなかった。



< 50 / 270 >

この作品をシェア

pagetop