≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
ハルの指さす、前方30メートル先に

オレのよく知っている『日村先生』の後ろ姿があった


白っぽいジャージが、生徒達の濃紺の波の中で浮いていた


ハルに指を指された事に気が付いたのか

はたまたオレ達が見ている気配に気づいたのか


ふと、足を止め 

日村令子はこちらを振り返った


「ほらほら…今こっち向いたぁ!

…悔しいけど…っ…やっぱ……美人だわ!ハァ…」


少しキツくなってきた山道に ハルは息切れしながら喋った


『みんなにも、ちゃんと見えていたのか…』


オレはホッとしたような感覚と


不安との『はざま』にいた…


あんな空気を持つ人間が…『実在』であるという


現 実…


確かに『人間』であるという確証のとれた 日村令子は


いつのまにか、また前を向いて歩き出していた





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