セピア
 部屋の中に置かれている箪笥(たんす)も心なしかレトロな雰囲気である。
リビングから見えるキッチンに実際には駅弁の『釜飯』でしか知らない昔懐かしいお釜が置いてある。
 カーテンの柄も昔見た雑誌の『竹久夢二&大正ロマン特集』の本から飛び出てきたような模様だ。 
そうなのだ。紛れもなくこの部屋は全体的に大正ロマンが色濃く漂っている部屋だったのだ。

 でも調度品の選び方にセンスを感じるし、それにそのどれもが高価そうに見える。
なのでこの部屋からはだいぶ裕福な暮らし振りが髄所に窺(うかが)えた。

 李は甲斐甲斐しく鍋の蓋(ふた)を開け、キリタンポの煮え具合を見てはその煮汁を木製のお玉でお碗に入れては、味見などをしていた。

 花梨はそんな李の顔をそっと覗いて見た。
卵形の顔に長い睫(まつげ)を伏せた横顔はやはり自分の母親である有莉禾(ゆりか)に良く似ているなと花梨は思った。
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