待っていたの
洋服

これでも、女子なのだ。


「払い下げられない、布…?」

返事はしたが、黒麗の言葉に疑問が残った。


「余りに豪華すぎるのと、濃い青だよ」

あっ!!
といまさら気づく。


(そうだ、迂闊だった)


「そうですね…迂闊でした」

色が決められているのだ。

差別……いや身分制。
ただそれを廃止しただけでは…どうにもならない。
彩には理解しずらい事だ、確かに日本にもあると言えばある。


だから凄く居心地が悪い。みんなひざまづく、まだ何も成していない彩に対して、なにかを期待して。


中流家庭の長女に生まれた彩には、理解できない。


彩は、幸せで甘えすぎていたのだ。


――ナニモデキナイ、コドモダ。


くらくらと眩暈がする、目の前が真っ暗になり、倒れそうになる。


(何度考えても私は相応しくないあの王者に…私は相応しくない)


黒麗さまも、王者に相応しい人。



(地位だけある、わたし…情けない何も知らない)


どんな気持ちで執事さん達は、私に笑いかけてくれるんだろう。


――ドンナキモチデ…アタマヲサゲルノ


背筋が凍る様だった、彩はどうしたらいい?
どうしたら…?


何ができる?


今……の彩に出来ることは、牢屋の掃除と…陛下を朝送り…朝議に出て、黙って聞いて、執務室でお茶出して、官吏の話しを聞く事だけ。



他に出来ることはは……ナイ。


いや…ひとつだけ


  お世継ぎを産む



それだけだ。


だから、栄達は彩が嫌いなのだ。


何もできない癖にあれは嫌だ、これは嫌だと駄々をこねるただの赤ん坊。


部屋を与えて、食べ物も服も与えたのに…陛下を拒むからなんだ。


ああ…私のココロは壊れてしまえばいい。
ココロがあるから苦しいのだ。
辛いのだ…。


好きではない人から触られるのが、悲しいのだ。


理屈ではどうしようもない身体がふるえる。



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