待っていたの

彩には友達も、味方もいない。


どうするんだろう。
どうなるんだろ。


そんな不安を抱えながら過ごす、毎日は辛い。


(でも…疾が無事でよかった)
執務室には頼んだものが揃っている。


「まずは…ズボンよね?できればシャネルみたいな、服がいいよね」

ひとり事をぶつぶつ言いながら、カリカリとデザインを描いていく。


「朱雀王様、いらせられました」

そう門番が告げる。
立って出迎える。


「出来た?彩…?」

栄達も白夜も気にせず、彩だけを見て、彩にしか話さない。


「はい、4枚ほど」

椅子の後ろに回り、顔を引っ付けて紙を覗く。


彩は気にしていないが、白夜は目線で射殺せそうな目で見ている。


「女性が動きやすく、なおかつ優美さを損なわないデザインだね」

「布を沢山使うのは、正装だけですよね?もちろんあの動けない服では不便ですし…国民が着れるとは到底思えません。ですが…正装は必要ですものね」

「うん、素晴らしいね。僕がモデルになってもいいよ」

「モデル…?そうですね、採寸しましょう」

「メジャーは…?」

「そこにあるよ」

栄達が答える。
日本の物と寸分違わず、メジャーがある。


「彩…流石にここで脱ぐのは恥ずかしいよ…」

ああ…黒麗は、男性が恋愛対象だからか、それじゃあココではダメだろう。

「そうですね、では…隣にでも」

「ダメだ」

「なぜですか?黒麗さまは、男性の前で裸同然になるのは恥ずかしいんですよ」
は…?
黒麗は酷くうろたえた表情で、彩を見る。
白夜はそのような顔の、黒麗を見た事はない。
溜飲が下がる思いだ。


「彩…凄く勘違いしているようだけど…僕の恋愛対象は、彩みたいなかわいい女の子だよ?」

流石にただでは起きない。さりげなく自分の恋愛対象として、彩の名前を入れている。


「女性なんですか!」

この世界に来て、奴隷以来の驚きようだ。



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