待っていたの
結婚式

結局なす術もなく、結婚式当日になった彩は、自分を怨めしく思っていた。


白夜はあれから触れて来なくなった、所有の証みたいに咲いていた真っ赤な印も消えた。


湯浴みと称して、大きなヒノキのお風呂に入らされている彩。


白い肌着をまとって、緑の地球外生命体の血液みたいな、ドロドロしたお湯につかっている。

(薬草の匂いだし……花のいい香なんじゃないの?フツー)

正直、何人かメイドさんに裸を見られるより、このお風呂にはつかりたくないと思ってしまう。


今日は牢屋に行けない、結婚の儀式だからだ。


「ね…、まだですか?」

「陛下に肌を晒すのです、失礼があって二度と訪れなくなられたら困ります」

高齢のメイドが答える。


「でも、子供を産んだ後は、訪ねてこない方がいいんじゃないですか…?」

「いいえ、わたくし共は陛下の寝所に侍る事はございません。その時が来れば、姫様方が入宮なさるでしょう」

(なんだ…やっぱり身分か)

(ほら、外国では好きな女性の為に冠を捨てた王様がいたよね?)


そんな事はないのか。


上がる様に指示され、その指示されたように動く人形みたいだ。



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