待っていたの

「月妃とは…?」

ひんやりとした、贅を凝らした廟の中に入ると、ほてった身体が急に冷え冷静になる。


そして誰も付いて来ないこの状況に違和感を覚える。

「王と婚姻を結んだ、異世界の娘の尊称だ」

「陛下が太陽で、妃は月ですか…大層なものですね」

「そうだな…だが民を従える為には…必要だ」

「そういうものですか……」

彩は従わないならそれでいいと感じる、一応民主主義育ちで、命令される事はほぼないのだから。


「どうした?もう笑わないのか」

「もう誰も居ません、幸せなふりをする必要がないです」

「そうか…」

髪にささる、青薔薇を見ながら、悲しそうな顔をする白夜に気づくはずもなく、両端に花びらが敷き詰められている、南国リゾート風の回廊を歩む。


「これから、一日この廟から出られぬ、いいな?」

「はい、かしこまりました陛下」

それから彩は、さっさと表にある民が参拝する為の礼拝堂に行ってしまう。


ゆっくり追いかけるが、彩はことごとく白夜はいないというスタンスをとる。



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