七狐幻想奇譚
目に飛び込んできたのは、椅子に腰かけ顔を覗き込む静輝。心なしか顔色が悪い。きっと、気のせいだ。そうに決まっている。




信じたくなくて自分にそういい聞かせる。



「心配させないでよ」

「……ごめん」



倒れる前の記憶がない。どうして倒れてしまったんだろう、何があったんだろう……。



桃花がぼーっとしていると、静輝が水のペットボトルを差し出す。わざわざ買ってきてくれたのだろうか。



「僕から貰うの不本意だろうけど。飲んで」

「……ありがとう」

「まだ祭りの準備があるから、桃花は先に帰っていいよ。担任には話しておいたから」



それだけを伝え、静輝は保健室を早々に出ていった。



――気づいてた。どうして、あなたがそんな顔するの。


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