ラスト プリンス

「………別に。どっちがホンモノでも興味ない」

 「……え」と小さく呟く声が聞こえたと思ったら、「耕太のバカ」と一言。

 ………は?

「おい。俺のどこがバカなんだよ」

 「全部」そう呟いて、後部座席の窓に頭を押し当てた。

 鏡越しに見る梨海は、悲しそうに外を見つめ唇を噛み締めている。

 そんな梨海を見て苛立つ自分が大人気ないと思う。

 彼女は俺の気持ちなんて予想すらしていないはず。 今日行ったことだって、『きっとカイさんに言われたんだ』くらいに思ってるだろう。

 それが、違う、と分かったとき。 どんな顔をするのか。

 楽しみでもあるが、内心、少し不安なのは梨海の気持ちを聞いてから1週間ほど時間があったから。

 今日の見合いのことだって、それなりに覚悟はしてたはず。

 ってことは、俺のことだって、と考えるのが妥当だと思う。

 それでも。自分が梨海へ膨らませていた気持ちを伝えないなんて考えたくもない。

 第一、二つ三つ年下は恋愛対象に入っていたが、それ以上年下の女に気持ちを寄せること自体、考えも経験もなかったこと。

 だからこその戸惑いはある。

 けど。
 頼ってほしいし甘えてほしい、と思う。

 俺がどんなに『好き』と言おうとも、今まで言わなかったことを知ったら、梨海は……。

 嫌いになるだろうか………?


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