緑の魔法使い
猟友会のメンバーの人なら庭に車を止める為に前に止める事は無いので、誰だ?と疑問を浮かべながら家の外まで迎えにでる。
左ハンドルの黒のベンツには白い手袋をした黒いスーツの老齢の男性が運転をし、後部座席には車の中だというのに大きなつばの付いた真っ白の帽子を被った、夏だと言うのに長袖の少女と、二十台半ばのこれまた黒スーツの男性が座っていた。
黒スーツの男が颯爽と車から降りたかと思えば、

「こちらは蒼河様のお宅でしょうか」

わざわざそれを訊ねる為だけにこの男は車から降りてきたのだろうか。
あまり拘りたくは無いなと思うも、スモーク越しの少女は酷く憂いな表情でこのやり取りを見詰めていた。

「蒼河はうちだけど・・・」

言えばほっとしたように胸をなでおろし

「噂で聞きましたが、こちらにどんな病も治す医者がいらっしゃるとお聞きしましたが」

どちらに?とでも聞きたそうに家の中を覗き込む男に俺は溜息を零す。

「うちにはどんな病も治す医者なんて居ませんよ。どこで聞いてきたのか知らないけど、そんな噂を信じてくるなんて普通じゃないね」

郵便ポストに収められた新聞を抜き取り、家へと戻れば黒スーツの男は慌てて俺の後に続き焦ったかのように話しを続けた。
< 13 / 79 >

この作品をシェア

pagetop