【続】俺様王子と秘密の時間
驚きと嬉しさが交ざったキス。
瞼を閉じることを忘れたあたし。
だから睫毛を伏せる千秋の表情をしっかりと見てしまって、とたんに胸が甘い悲鳴を上げた……。
鼻をくすぐる千秋の香りに酔いしれてしまいそうになった時、羽鳥が舌打ちしたのがわかった。
ゆっくりと唇が離れる。
視線が絡まって頬が熱を持つ。
――チャリン
金属音とともに羽鳥があたしを見て言った。
「さっき言ったこと、結構マジだから」
バイクの鍵を人差し指でくるくる回して、羽鳥はその言葉を残し教室から出て行った。
『オレと浮気しちゃおっか?』
脳内で再生される。
何故か少し、切なくなる。
羽鳥にまた助けられたのに、
“ありがとう”が言えなかった。