BLACK DIAMOND
誰かと話をしているときに割り込むというのは、どうしてこうも渋りたくなるのだろう。

相手がそれほど親しくなければ、逸れがなお一層増す。


どうしようもないので近くに行くと、話し相手はどうやら日本人男性。

そして、彼に向けて失礼なくらい爆笑していたのだった。


その相手の男性が私を見ると、目を丸くする。
そして、彼の肩をバシバシと叩き、背を向けて、手を軽く振りながら去っていった。



*****



肩を摩りながら彼が私の方を向く。


「Thank you for waiting.
 I'm sorry,we have only this one.
 (お待たせいたしました。
 こちらの商品は一点のみでした、申し訳ありません。)」


今着たばかりなんです、という雰囲気を出して彼に伝えると、それでは仕方ないと言って、良いのか悪いのかお買い上げいただき、包装を承った。

キャラメル包みをして、十字にリボンをかけて……実はラッピングが得意ではないけれども、今の精一杯を尽くすことにしている。
というのも、ここで仕事を始めるまでラッピングをしたことがなかった。デパート包みという包み方も難しくて、新聞の折り込みチラシを利用して何度も練習しているけど、実際上手く出来たと思うことは数回に1回程度である。

それなりの出来映えにホッとしつつ、店内放送で渡した番号札の数字で呼びかけ、彼に品を手渡すと、またも流暢な日本語に聞こえるお礼を述べて店を後にした。
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