secret WISH
口から漏れた声は、ガラガラと崩れる音に混ぎれて消えた。
震えながら伸ばした手の先には、灰が風に乗っていた。
俺の服を掴んでいたチャロは、さっき俺を止めたくせに
城へ行こうと駆け出した。
止めようと思っても、身体は思う様に動かなくて。
小さくなる背の先に、一人の男がいた。
『おとうさん!』
チャロはベニトおじちゃんに抱きつくと、涙を流しながら叫んだ。
『おかあさんは‥ッ!?セレスのおとうさんとおかあさんも‥!!』
ベニトおじちゃんは何も言わないで、下を向いていた。
切れる程に、強く唇を噛み締めて。
どんなにチャロが訊いても、その口が開かれる事はなかった。
どうしてこの城が狙われたんだ。
どうして沢山の人が怪我して倒れているんだ。
どうして父さんと母さんが‥
もしかして、昨日言ってた“悪い人”が襲って来たのか?
何も言わないベニトおじちゃんを見て
俺はとうとう涙が出てきた。
‥父さんと母さんは、死んだんだ。
拭っても拭っても次々に出てくる涙。
チャロはベニトおじちゃんの足元で泣き叫んでいた。
『‥2人とも、よく聞いて』
やっと開かれた口に、チャロと俺は
それぞれ涙を流しながらも顔を上げた。
『セレスくんの住んでいる町に、チャロのお爺さんがいるから‥』
そこに行ったら、きっと助けてくれる。
その街までの道のりは、セレスくんが知っている筈だ。
チャロは召喚の仕方がまだ分からないだろうから、“石”を取りに行くんだ。
『‥お父さんは、ここでお母さんとずっと一緒にいるから』
『‥わたし、ひとり?』