secret WISH


武器を構えて、俺は奴の顔を見た。
余裕染みた笑みに、組まれる腕。

「別に? 何だかね、裏切り者がいたみたいでね」
そいつがさ、ここ最近毎日会いに行っていたのが
クラーヂマンだって話。

「‥っ」

まさかアメス、バレたのか!?
顔を顰めると奴は俺を指さした。

「だから、人間を消すんじゃなくて、やっぱり一番邪魔なクラーヂマンを先に消すことにするんだって」

「‥どういうことだ」

「さぁ? どういうコトでしょう?」

くるりと振り返るそいつは、ひらひらと手を振る。
パキパキとガラスを踏む音の向こうで
オニキスがその男を睨みながら
物影に隠れていた。

「まぁ、何でも楽しみがある方がいいだろ?」

それだけ言い残して、その男は消えた。
オニキスは俺のところに飛んでくると、
くるくると俺の周りを飛んだ。
そして心臓の上に来ると、ガブリと噛み付かれた。

「い‥ッ!?」

イテェじゃねぇか!!と叫ぶ為に
俺は大きく息を吸ったが、その言葉を出す事は無かった。
オニキスが、蛇の様な形をした黒い螺旋の塊を銜えていた。
しゅぅぅと溶けていく塊に、
オニキスは更にガリガリと噛み付く。

「‥それ、ドルガー?」

コクコクと頷くオニキスは、もう一度俺の体の周りを回ると
棒を手にして、地面に字を書いた。

ドルガーは、何にでも変形できる。
気を付けて。

さっきの野郎、指差したのはドルガーを俺に忍ばせる為か?
オニキスがいて助かったぜ‥。


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