恋めぐり
「お前!何してんだ」


慌てて消そうとする彼を止めた。


「この命は差し出すわ。でも、身体まではあいつの自由にはさせないから」


火は大きくなっていく。

藤の匂いなんてもう感じられない。


「私を撃ったら早く出て行って。知ってる?建物が燃える様はね、桜が散るのに似てるんだって、母様が言ってた。それ見たいの。それを見ながら死にたいの」


上手に笑えてるかな?


君に涙も見せたくないの。
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