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もうひとりのメルツ
「そうだ、犬は?犬は大丈夫?」
光の矢を消すことに夢中で、本来の目的を忘れていた。
「ん?大丈夫だ。プルプル震えているけど、無事みたいだぞ。」
「ホントだ。良かった・・・。さっきの光の矢に巻き込まれてなくて、ホント・・・良かった。」
僕は子犬の所に向かった。リーグも一緒だ。
近づくと、まるでお礼でも言うかのように、一生懸命にしっぽを振っている。
「なんか、ありがとうって言ってるみたいだな。」
「だね。」
僕は子犬を抱き抱えた。
すると、ペロペロと顔をなめる。
「く、くすぐったいって。」
無邪気に笑った。
すると、それを見て、リーグが意外な事を言いだした。
「なぁ、こいつさ、うちで飼わないか?」
「えっ、いいの?」
「この間、親父と話してたんだよ。犬とか飼いたくね?って。こんなに、イバーエになついてるしさ。ここでこいつ置いてったら、またさっきみたいな事に遭うかもしれないだろ?」
こんな素晴らしい提案に、賛同しないわけにはいかない。僕はふたつ返事でOKした。
「よしっ、じゃ、名前決めないとな。イバーエ、お前が決めろよ。」
「いいの?」
「いいのも何も、お前が助けたんだからな。お前以外に、誰が名前付けるって言うんだよ。」
「そう?じゃぁ・・・。」
少しだけ考えた。
「メルツ、メルツにしようよ。」
「それって、じいちゃんの名前だろ?いいのか?」
「だって、見てみなよ。こいつの髭、まだ子供なのに、じいちゃんみたいだよ。だから、メルツ。きっと、じいちゃんが生まれ変わって・・・僕のところに来たんだよ。」
「そう言われれば。」
子犬の顔をのぞき込み、リーグは笑った。僕は、そんなリーグを見て笑った。
少しだけだけど、じいちゃんを失った哀しみを、こいつが埋めてくれた気がした。
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