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どんなに歩いても、家が近づいて来ない。もう十分は歩いているはずなのに、まだ遙か向こうにあった。
「いったい、どれくらい歩いたら着くんだよ。」
リーグが愚痴をこぼした。
対して、メルツは元気だ。勝手にどこまでも走って行こうとする。僕はそれを制止した。
「こらっ、メルツ。そんなに遠くに行っちゃダメだよ。」
「ほう、その犬はメルツと言うのかい?」
エーマリリスさんが聞いてきた。
「はい、それがどうかしたんですか?」
「いや、何、その犬の顔を見て、さっきから気になってはいたんだよ。誰かに似ているなと。それが誰だか、今わかったってわけさ。」
「似ている?」
さっき僕が制止したせいもあって、メルツは僕の足下に戻って来た。その足下にいたメルツを、エーマリリスさんはそっと抱いた。
「やっぱり似ているのぉ。」
そう言いながら、大声で笑った。
僕たちも、何もおかしくなかったけれど、真似して笑ってみた。
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