猫とうさぎとアリスと女王
 シーナの温かな優しさが、私の心に流れ込んできます。

引き止めるつもりなどありませんでした。



ただ、伝えたかった。

私が貴方を想うこと。
何処へ行っても想っているということ。
本当は引き止めてしまいたいこと。
一緒に連れて行って欲しいと願っていること。

けれどそれができないこと。


全て伝えたかったのです。



「そのスケッチブックは、本当はラフスケッチ用だったんだ。
風景を書き留めておいたりしてた。

でも段々マコで埋まるようになってきちゃったんだ。

次は何を描こうかと思ってぼんやりすると、何故だかマコの顔が浮かんできてさ。
昨日はこんな顔してたっけ、なんて思いながら自然と手が動いて。

気付いたらページが終わってた。」


シーナはそう言って笑いました。


「それだけマコは僕の中で大きな存在になってるんだよ。」


私の瞳の奥を見つめ、シーナはそう言ってくれました。

そうして左手の薬指の指輪に口付けを落とします。
あの日、原宿のBABY,THE STARS SHINE BRIGHTで御揃いで買った薔薇の指輪。


「どのくらい先になるかわからないけれど、必ず迎えに来る。
この指輪に誓うよ。」


また、涙が溢れました。

悲しくて、けれど幸せで。


私はこらえきれずシーナに抱きつきました。




「私、待ってますから。」


「うん。」


「忘れないでくださいね。」


「うん。」


「イオとサボのことも、忘れないでくださいね。」


「うん。」


「お手紙、書いてくださいね。」


「うん。」


「帰って来れる時は帰って来てくださいね。」


「うん。」


「シーナ。」


「うん?」










「大好き。」













「うん。」
< 233 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop