猫とうさぎとアリスと女王
 結局シーナと私は近くのカフェに入ることにいたしました。

荷物は全て運転手の方に任せ、帰りはシーナがお車の手配をしてくれるようです。
(私はいいと言ったのですが、シーナがどうしてもと言うので・・・。)


私はピーチティー、シーナはカプチーノを注文。
コーヒー類が苦手だと言えば、“子どもみたい”とからかわれました。

からかわれるのは嫌ですけれども、シーナの笑顔を見るとそんな気持ちはどこかへいってしまうのです。
からかわれるのも悪くは無い、そんな風に思います。


「あの、その袋は何が入っているのですか?」


私はシーナがずっと持っていた紙袋が気になっていました。


「ああ、これ?絵の具だよ。油絵用のやつ。」

「シーナ、絵を描くのですか?」

「たまにね。
今日も油絵を描いてたんだけど、絵の具が無くなりそうなのに気付かないでさ。
急いで買いに来たんだ。だからこんな格好って訳。」


絵の具のついたシャツとパンツ。そしてサンダル。
シーナが急いで家を飛び出したのが想像できて、妙に可笑しく思えました。


「絵を描くと止まらなくなるんだ。
“絵の具が終わったからまた今度”なんてことには出来ない。止まらないから。
描ける時に描かないと、どう足掻いても描けなくなっちゃうんだ。」

「じゃあ早く帰らないと・・・。」

「ん?今日はいいよ。マコに会ったからお休み。」


描ける時に描かないと、描けなくなってしまうと言ったのはシーナなのに・・・。

いいのかしら?家に帰って絵を描かなくて。


けれどシーナの言葉が嬉しくて、まだ帰って欲しくは無くて。
だから口には出しませんでした。


シーナはイオと同じく才色兼備。
その上、油絵まで描けてしまうなんてすごい。

どんな絵を描くのかしら?


私はそんなことばかりを考えていました。
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