こころの展覧会
第二話『紫陽花ー後編ー』

数日降り続いた雨がようやく止んだ。しかし空は薄暗く、太陽は暗雲の向こうへと隠れてしまっている。湿気を含んだ粘つくような空気が、雨が近いことを告げている。

藍は与えられた一室の窓を開けて、空を見ていた。手元には、一枚のルーズリーフ。箇条書きに一日の予定が書かれたそれは、皐月が作成したものである。今日から藍に与えられた仕事が、そこに記載されていた。

与えられた部屋へと視線を戻した藍は、自分が寝ていた布団を丁寧にたたみ、隅へと寄せた。手のひらサイズの目覚まし時計と、布団以外には何もない部屋は、とても広く感じる。

目覚まし時計の長針と短針が6の数字を指したのを確認して、手元のルーズリーフを折りたたみポケットに入れると、部屋を出た。

台所に向かうと、すでに皐月がお湯を沸かしていた。その背中に向かって、藍は声量を加減して言った。

「おはようございます」

 

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