COLORS【白】W ─ダブル─
あれから夏が過ぎ季節は秋になった。
朝晩は特に肌寒く長袖のブラウスだけでは心もとない。

「いよいよ、今日か」
世間では『スポーツの秋』、『食欲の秋』、『芸術の秋』……誰が何と言おうと夏のコンクールの発表の日。
いつもと同じ朝なのになんだか落ち着かない。

「おはよう」

家の中で最初に会うのは桜かお母さんかお父さんか……。
だいたい九割くらいの確率で桜なのに今朝は違った。

「あれ?桜は?」

りビングに居たのは母一人だけだった。
マグカップにインスタントコーヒーを入れると、湧かしたばかりの熱湯を注ぐ。
毎朝、私の一口はこのコーヒーから始まる。

「先に学校に行ったわよ」

「……そっか」

きっと結果が気になって早く行ったのであろう。
私は彼女ほど自信も無かったし、それほど結果が気になっているってほどじゃなかった。
だからこんなにのんびりしているのかもしれない。

「あんたは早く行かなくていいの?」

「うん。別に早く行ったからって結果が変わるわけじゃないしね」

「結果?」

「コンクールの発表」

「あ~っ!そっかそっか、母さんすっかり忘れてたわ」

ったく……。なんちゅー親だ。
まぁ、でもいつも子供のなりふりを心配して、付きまとわられるよりはマシかもしんない。

「そろそろ行こうかな」

トーストを食べ終えコーヒーを飲み干してマグカップをテーブルに置いた。

「行ってらっしゃい~健闘を祈る!」

「は~い。行ってきます~」

いつもより三十分早い時間だが私は家を出ることにした。
私が家を出ると同時にお父さんが起きてきたのは言うまでもない。
< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop