図書室のラブレター



周囲は静まり、
さっきの騒ぎが嘘のようだ。



「晴樹君」




私は愛しそうに
彼の名を呼ぶ。


彼もしゃがみ込んで、
目の高さが合う。



「本当に、
本当に良かった」




また、
涙があふれ始めた。


号泣していた。



「無事で良かった。
守ってくれてありがとう」




彼は申し訳なさそうな
顔をしていた。


何も言わず、黙っていた。



そして、やはりパトカーは
この学校の前で止まった。



そこに校舎から
出て来た先生たちが
対応してくれていた。


そこに教頭先生が
近づいてくる。


優しそうな声で言うのだ。



「花井君、
少し来てもらえますか?」




覚悟していたのか、
顔は強張っていた。



「分かりました」




晴樹君は素直に従って、
進んでいった。


私たちを取り残して。

< 200 / 293 >

この作品をシェア

pagetop