蜂蜜男子の誘惑~右にバニラ 左にチョコ~
Act.1 スウィートな超展開
 それは高2の夏休み明けの実力テストが終わった昼休みのこと。
 
「相川由依(あいかわ ゆえ)さん」

「はい?」

 廊下で呼び止められ振り向き、視線の先には制服のネクタイ。

(はて?)

 誰だろうとゆっくり視線をあげていく。

 ちょっと白よりの小麦色の肌。

 形の良い、口角が少しあがっている唇。

 スッと鼻筋は通っていて、右目の下に泣きぼくろ。

 瞳は薄い茶色、目はスッキリクールな奥二重で大きめ。

 眉は上がりすぎず自然な形。

 髪は短めでふわっと無造作ヘア、色は自然な栗色。

(ひ、ひぃぃぃっ!! ななななななんで!!)

 その姿はいつもパスケースで見ている姿。憧れの柚木 右京(ゆのき うきょう)先輩。

「ちょっと話あるんだけど、いいかな?」

「……!!」
 
 それは願ってもないお誘いです。

 もう全然良いです!といわんばかりに頭を振る。

 まわりの女の子たちがなにごとかと廊下に出てくる。そして先輩の姿を確認するや否や、友達を呼んできて見物している。

(ふぉっ。 緊張するっ!!)

「お昼、食べた?」

「あ、えと、はい!」

「そっか。 じゃあ、いいかな? 君の時間をもらっても」

(イヤァァァァァ!! 時間をもらうってぇぇ)

 大興奮中っ。

 それはあたしだけじゃなく、まわりの女の子たちもそうだった。

「は、はい! もちろんです!」

「じゃあ、屋上……行こうか?」

 にっこり彼が笑うとまたキャーーッ!!という黄色い悲鳴が教室や廊下に響き渡る。

「あははー。 みんな元気だね」

 そう言って優しく甘く微笑む。
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