ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》
言ってごろりと寝返りをうち、あかりに背を向ける。
「あーマジウザっ。ホント見てるだけでウザさマックス」
「だったら見んな。マジ金取るよ」
「うっわ。ガチで丸パクリしてきたよこの人。ありえなくね? てか金取れんのはJKの特権的なアレだから」
「なんだよアレって……」
「アレはアレだよ。なんかあんな感じのそんなところが、うまくいったりいかなかったり――てかわかるぢゃん」
「わかるか!」
背中を向けたまま、とりあえずツッコんどく。最近ツッコミなしで会話が終わることが、ほとんどなくなったような気がする。
目の前のテラスを見る。ガラスの向こうの空は、どんよりと曇っていた。予報では明日も曇りで、薄暗い一日になるらしい。
「もおいい。これ以上することないなら、あたしも好きなことやるし」
言って、壁に立てかけてあった忠吉を持ってきた。何をするのかと思ったら、鍔や柄、鞘にまでビジューだのラメだのを貼り付けてデコり始めた。
ゲージュツヒンになんてことしやがる、このガキは……
あかりが作業する姿が、ずっと窓ガラスに映っている。部屋が明るく外が暗いため、割とはっきりとあかりの姿が見える。
よく磨かれた窓だ。これが外も中も暗かったら、ここにガラスがあることもわからないくらい透明度が高いんだろうな……などと考えていると――
ふと、ある考えが浮かんだ。
「あ……」
思わず声を上げた俺。二人がこちらを振り向く姿が、ガラスに映る。
「そっか。その手があった!」
背筋とスプリングの力で、ベッドから飛び起きる。
「何? てか今の動き、若干キモい」
「うるせえ。
ディルク。王が一発でも撃ってくれば、その位置はわかるよな?」
ディルクはやや面食らった顔で、
「あ、ああ。だからスナイパーにとって、初手でし損じることは致命的だ。場所を知られた上に、反撃の隙を与えてしまう。
だが王ほどのスナイパーが、し損じることなどまずあり得んぞ?」
「だろうな」
言って俺はスマホを取り出し、メモリから呼び出した番号をコールする。
「けど、弾が『届かなきゃ』良いんだ」
『?』
二人が疑問符を浮かべているが、説明はあとだ。何度かコール音が鳴り、目当ての相手が電話に出た。
 
「まだデコの途中なんだけどー……」
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