僕様王子に全てを奪われて
『ちょっと、聖一郎様、会議中なんですよ!』

電話の向こうで、冴子の声が聞こえてきた

『うん、でも僕がいなくても平気でしょ?
飯島さんがいれば…話しは進むわけだし』

有栖川の明るい能天気そうな声が聞こえる

なんか、腹が立つ!

『愛子さん、どうしたんですか?』

「お腹が減ったぁ…なんでこの家には冷蔵庫がないのよ
喉も乾いたぁ
服もないし、お金もないから…買いに行けない!」

『それは大変だねえ』

有栖川の嬉しそうな声が、耳の中に響いた

うわあ…なんか、嫌だ

『僕がいないと生きていけない?』

「……いなくても、平気です」

私はぶちっと電話を切ってしまった

ああ…やってしまった!

御飯が遠くなっちゃったよ!
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