Magician Song〜魔術師の唄〜
 
 
ひらひらと手を振り、出ていく父を見送ったリアは服選びに専念した。
 
 
衿の付いた長袖に、デニムのぴったりとしたショーパン。
引っ張り出した服をじっと眺め、リアは思案した。
 
 
今日はいつもより少し暖かめであるから、この格好は寒くはないだろう。
 
それにこの後父の稽古があるから、身動きが取りやすいものの方がいい。
 
 
 
………。
 
 
 
「…いっか、これで」
 
 
小さく呟いて、リアはいそいそと服を脱ぎ出した。
 
 
 
――――――――
 
―――――
 
――
 
 
「遅いぞリア!腹が減りすぎたら、父さん死んじまうんだぞっ!」
 
 
出てってから5分も経ってないだろう。
 
 
胸の内で軽くつっこみ、リアは苦笑した。
 
 
 
 
服を着替え終わったリアは、急いで自分の部屋を出て来たのだ。
 
 
……が。
 
 
「…っう…っう…!お前は、父さんが死んじまってもいいんだな…っ!…とーさんは悲しい!!」
 
 
片手で拳を作り、もう片方で顔を覆い。
そして、そのまなじりから零れ落ちる、キラリと光るそれ。
 
 
「………」
 
 
ああ。
 
 
どうしてこの人は、こうも自分を腹立たせることがうまいのだろう。
 
だが、いかにも嘘っぽいそれは、実は本物だということを知っている。
だから、無下に怒ることも出来ないのだ。
 
 
そう。
 
 
続に言う、ガラスのハート。
 
 
………。
 
 
いや、少し意味は違うだろうが、気にしないことにしよう。
 
 

< 5 / 19 >

この作品をシェア

pagetop