please(BL)
駅前広場に3時。

 待ち合わせの時間としては微

妙だ。

だが、飲み会という名目で集ま

るのだから、少し時間は早い。

 陽介は手にしていた腕時計を

見て、自分が一番はじめに集合

場所についてしまったことに改

めて後悔した。





「・・・・・・・・・・・陽介?」

 声だけでわかる。それが誰な

のか。

 高いハスキーボイス。

振り返ると、やはり彼女はそこ

にいた。

「早いね。やっぱ一番か」

「そう思うなら早めに来ておい

てほしぃんだけど」

陽介がそういうと綾は笑った。

その笑顔がまぶしい。

 とても魅力的な女性である。

肩までのストレートは黒のまま

で、すれた感じがまったくない。

今時という感じがしないぶん、

彼女の外見からは知的さがみえ

る。

美人と形容するような容姿では

ないが、人間の魅力とは容姿だ

けではない。

「浩次はいつも遅れてくるもん

ね」

「・・・・・・・・いつもかよ?」

 さりげなくそういうと、彼女

は苦笑した。

 しばらく待っていると、3時

丁度に浩次がきた。

「悪ぃ! 待ったか?」

「・・・・待ったよ・・・・」

綾の恨みがましい目に、浩次は

平謝りだ。



勿論陽介に謝る事も忘れない。

彼らは、駅近くの居酒屋には

いった。




よく飲む。よく食べる。

 普通、女の子はそれをいやが

るのかもしれないが、陽介はそ

ういった人間に必要な行動をし

っかりする人間が好きだった。

そういったことでは、浩次も綾

もそれにあてはまる。

唯一あてはまらないのは、

自分だけだ。

綾がほろ酔い状態で帰ると言っ

たので、浩次が勿論送っていく

のだと思ったのだが、

「たまには一緒に帰ろうぜ」

という彼の言葉に、陽介は曖昧

にうなずいたのだった。




 送っていかなくていいのか?

 と言うような勇気は、ない。














< 3 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop