お兄ちゃんの気持ち
パパ
「お父さん、女の子ですよ!」

…・・・---

夕方、携帯にかかってきた一本の電話。

病院にいる母さんからで、カオリが破水したから入院したという知らせだった。


仕事を切り上げ、コウスケに後を任せるとそのまま病院へ急ぐ。

予定日までまだ1カ月半もあるというのに、もう出産なのか?

カオリに言われて詰め込んだ育児書の知識だけど、予想よりも早く始まった出産に普段冷静な俺も落ち着かない。

いつも電車で帰る道を、慌てて拾ったタクシーに乗り込んで病院へ向かう。

そんなに遠くない病院だけど、あせっているときはとにかく時間がかかって仕方がない。

帰宅時間と重なって混雑し始めた大通りを、タクシーが急いでくれる。

やっと病院に着きナースステーションで確認すると、陣痛室というところに居ると言われた。

言われた場所へ行くと部屋の前に母さんとお義母さんがいて、俺の姿を見つけると看護婦さんに声をかけていた。

「1時間くらい前から陣痛室にいるのよ」

不安そうなお義母さんが、ハンカチを握りしめながら俺に詳細を教えてくれた。
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