Symphony V
唯はリビングのソファに腰掛けて、持っていた1冊のアルバムを広げた。

「それは?」

何を見ているのかと、不思議そうに覗き込んでくるので、唯は巧にも見えるようにと、アルバムを見せた。

「例の、5年前の旅行の写真」

ぱらぱらとめくりながら中を見ていく。

「蜘蛛が言ってたってヒントの旅行か」

巧の言葉に、村儀が眉をピクリと動かした。

「あれ?これ…」

何ページかめくったところで、唯の手が止まった。

「あれ?これ…例の高遠って女の人か?」

巧も気づいたみたいで、唯と顔を見合わせた。

「おい、見せろ」

村儀が唯の持っていたアルバムを奪い取る。写真を見て大きく目を見開いた。

「この写真の場所はどこだ!」

言われて唯はたぶん、と答える。

「旭川の、どっかの公園だったと…家族で旅行に行ったときに泊まったホテルの近くにあった公園、じゃなかったかな」

村儀はそれを聞くと、電話をかけ始めた。

「佐藤か。あぁ…そうだ。あぁ?んなこと、今じゃなくていいだろうが!それより5年前…」

電話の相手はどうやら佐藤のようだ。少しまくし立てるように喋る。

「なぁ…もしかして、このときに何か、見ちゃいけねーもんを見たんじゃねーか?」

巧がぽそっと唯に囁く。

「でも、そんなの見てたら、お父さんもお母さんも、警察に言ったんじゃないかな」

困ったような表情で答える。

「そうだよな…」

2人とも、うーん、と腕を組んで首を傾げた。


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