Symphony V
唯の顔色がどんどん悪くなっているのに気づいたレオンは、唯を横に寝かせて、膝枕をしてくれた。

「…ごめんね」

いろんなことが整理できなくて、唯はそっと目を閉じた。


結局、一体、何が原因なんだろ。



目を瞑り、唯はボーっと考えた。



「なぁ、唯」

優しいレオンの声。

「なに?」

「…稜夜はずっと、唯のことを好きだったんだぜ?10年前からずっと」

レオンの言葉に、唯はがばっと起き上がった。

「い、今なんて言った!?」

唯がものすごい勢いでレオンに詰め寄った。

「え?稜夜はずっと、唯のことが好きだったって」

「違う!その後!」

「…10年前からずっと、唯のことが好きだった…ってそれがどうかしたのか?」

「そんな…!そんなはず……」

唯は困惑した。


私が稜夜先輩に会ったのは、てっきり5年前の家族旅行のときが初めてだと思ってた。だけど、レオンは今、稜夜先輩は10年前からって言った。
…私、稜夜先輩に10年前に会ったことがあるっていうの?


10年前といえば、唯はまだ5歳。10歳のころの記憶でさえ曖昧だというのに、それよりさらに5年も前の記憶など、ほとんど何も思い出せなかった。
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