Symphony V
はっと気づくと、心配そうな顔をしたレオンがいた。

「ど、どうしたの?」

びっくりして思わず目を大きく開けて、レオンをじっと見つめた。

「いや?…何か思い出したのかと思って」

言われてはは、と笑う唯。レオンは心配そうな顔をしたまま、じっと唯を見つめる。

「稜夜先輩と、お母さんと、3人でかくれんぼをしたのを思い出したの」

「楽しそうな思い出じゃねーか!」

ほっと安心した顔で笑うレオン。

「私が鬼になって、稜夜先輩と、先輩のお母さんを探したの」

そこまで呟いて、ふとあることに気づいた。

「先輩は…ホテルのロビーにいたの。少し泣きそうな顔をして立ってた。その時、先輩、『お母さんとはぐれた』って言ってた。しばらく一緒に探したけど、見つけられなくって、一緒に、先輩のお父さんの所にいった」

言葉に出していくと、だんだん記憶にうっすらとかかっていた霧が晴れていく。

「先輩のお父さんの所に行った、女の子と、その両親らしき人たちがいた。部屋の中に、私と先輩が入っていくと、女の子に先輩とつないでた手を無理やりはずされて、それから…」

その後がいまいちよく思い出せない。唸っていると、レオンが唯に聞いてきた。

「そのとき、唯の両親はどうしてたんだ?」

言われて唯は聞かれてハッとした。

「思い出した!先輩のお父さんに部屋から私だけ追い出されて、でも、先輩のお母さんのことが気になったから、部屋で休んでたお父さんとお母さんにお願いして、一緒に探してもらったんだ!」

頷く唯。

「結局、探したけど見つからなくって、先輩の所に戻ったんじゃないかって話になって、部屋に戻ったんだ」

「稜夜には聞きに行ったりしなかったのか?」

「うん…たぶんしてないと思う。だってその後、先輩に会った記憶がないんだもん」


単に思い出していないだけかも知れない。
けれど、たぶん、先輩には会っていない。

そんな気がした。
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