Symphony V
「東峰さん、難しい顔してどうしたの?」

佐藤が唯に声をかけてきた。

「あ、その…少し調べ物をしてたんですけど…」

唯が調べて出てきたことを佐藤に伝えた。すると、佐藤は何か思い当たる節でもあるかのように、ポケットに入れていた手帳を取り出してぺらぺらっとめくる。

「ずいぶんと使い込んでるんですね」

唯が言うと、佐藤は苦笑いした。

「あぁ、これ?これはね、もともと父が使ってた手帳なのよ」

ぼろぼろに使い込まれた手帳は、少し色あせていて、カバー部分も所々はげている。

「父も警察官でね。今はもう定年退職しちゃって、そんな面影はどこにもないんだけど。ずっと憧れてたのよね」

少し感慨深そうに話す佐藤に、唯はにこっと笑った。

「あぁ、ごめんね、今そんなことより。えぇっと…どこだったかなぁ…あ、あった!これこれ!」

佐藤が1枚のページで手を止めた。

「これって…」


【○月×日 Y.T USA CSと】


「…どういう意味です?」

佐藤に聞くと、さぁ、と首を傾げられた。

「さぁって…」

「いや、ちょうどその位の時期の日付だったから、何か関係あるのかな?と思って」

あはは、とカラ笑いを浮かべる佐藤を、唯とレオンはじとっと見つめる。

「…あんまし役に立てなくってごめんね」

そう言って、佐藤はその場をそそくさと去って行った。
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