Symphony V
唯がそう呟いた時、ぱぁんと乾いた音がした。

何度か聞いた覚えのあるその音に唯は驚き、思わず振り返る。

「…陽輔!」

拳銃を構えた村儀の姿が視界に入る。
と同時に、陽輔の体がその場に崩れ落ちた。

何が起こったのか理解できず、唯は陽輔の体を抱き起こす。


…どこも出血はしてない。弾は、こめかみをかすった…?


うっすらとこめかみの辺りから血が流れ出ていた。

「大丈夫か!?」

レオンが駆け寄ってくる。

「なに?どういうこと?」

周りを警官に取り囲まれる。村儀は首を振りながら、携帯で何かを話していた。

「…唯が蜘蛛に会うのはわかってたから。だから、あえて唯を行かせたんだ」

「え?」

「ごめん。本当は反対だったんだ。だけど…こいつを捕まえなくちゃ、唯の命が危ない。だから…」


そうか…抜け出したこともばれてたんだ。

「あは…あははは…」

「唯…?」

思わず笑う唯に、レオンは驚いて顔を覗き込んでくる。

「あははははは…」

「ごめんな…唯!」

唯の表情を見て、レオンは思わず唯を抱きしめた。
とまらない涙。辛くてたまらないといた顔。

レオンは泣きそうになるのをぐっとこらえ、唯を強く抱きしめた。
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