Symphony V
思えばいろんな場面でレオンには助けられた気がする。辛いときも困ったときも、悲しいときも。


陽輔には、そういう人がいなかったのかな。


みんなを呼んでくると、部屋を出て行くレオンの背中を見て、唯はふと思った。

「陽輔にも、そんな人がいれば。また、違ってたのかも知れない」

そう呟いたときだった。

「俺が何だって?」

驚いて思わず声のした方を見る。
と、そこには入院用の服を着た陽輔の姿があった。

「えっ…なん……!」

「大声出すなって」

くすくすと笑って、陽輔が唯の口を手で押さえた。


…陽輔が…笑ってる。


今までに見た冷たい笑顔ではなかった。
友達とおしゃべりをして笑う。そんな感じの微笑み。

唯が目を丸くしていると、陽輔はにこっと笑って唯の頭を撫でた。

「ありがとうな。俺のこと、止めてくれて」

言われて唯は首を横にふった。


もっと早くに出会えていれば。
もっと早くに気づいていれば。
もっと早くに止めていれば。


「あまり何でも自分のせいだと思うな。俺はもう、この先は人を殺めたりはしない」

陽輔の言葉に、唯は目を大きく見開いた。

「本当に!?」

陽輔は優しく笑って頷いた。

「ああ。約束だ」
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