Symphony V
「うそ!マジで!?」

チケットが当たった嬉しさで、思わず顔が緩みながら頷いた。

「いいなぁ…私はだめだったもん」

「えへへ。里香の分まで楽しんでくるよ」

残念そうに里香は深いため息をついた。

「なになに?どしたの?」

昨日はチケットが当たった嬉しさと興奮で、夜はよく眠れなかった。そのせいで、今朝はきちんと朝起きることができなくて、学校に着いたのはぎりぎりだった。
親友の里香が、HRの後、どうしたのかと理由を聞いてきたので、私はチケットを見せて驚かせたのだ。

「私もだめだったのに!いいなぁ!」

里香とのやり取りを聞いていた他のクラスメイト達もどうしたのかと興味津々といった風で、やってきてはチケットを見て羨ましがっていた。

「他にはチケット当たったって子、誰もいなかったよね」

皆がそういえば、と頷いた。

「当たってよかったけど…でも、ほんとにあんなところにくるのかなぁ…」

チケットが当たったのは確かに嬉しいが、どう考えても不自然だった。
こんな田舎に、有名人が来ることなんてめったにない。特に、今回のライブは、ピアノ教室の発表会なんかでも使われるような、市民会館ホールで行われる。
チケットが発売になった瞬間に売り切れるほどの、しかも世界的に有名なアーティストが、なぜ、こんな田舎で、しかもその中でも中心地から離れたこんな場所の市民会館で。

「…ドッキリだったりして」

ボソッと里香が言った。

「…私もそれ、ちょっと考えた」

うなだれるように、里香の言葉に視線を落とした。

「よく考えてみたらさ。ありえんしさ、キアリーが来るなんて」

「じゃ、チケット頂戴」

「それとこれとは別。万が一の可能性でも、来るなら行く」

ドッキリだったらそれはそれで怒りを主催者にぶつけてくるまでだ。ぐっとこぶしに力を込めた。
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