Symphony V
「ちょっと村さん!」

佐藤はちらっと唯の方を見ながら、小声で村儀に話しかけた。

「いくらなんでも、もう少し言い方があるんじゃないですか?」

村儀はきにした様子もなく、階段を上っていく。

「あの子、まだ15歳ですよ?突然、両親が殺されて…」

「おい」

突然村儀が立ち止まる。まだ喋ろうとしていた佐藤は、思わず村儀にぶつかる。

「お前の仕事はなんだ」

村儀に聞かれて、少しむっとしたように、佐藤は答える。

「…なんですか、いきなり。私の仕事は、市民の安全を守り、凶悪犯を捕まえることです」

その言葉を聞いた村儀はふんっと鼻で笑った。

「なんです?」

眉にシワを寄せて、村儀を睨み付ける佐藤。

「お前の中で、あの子はすでに被害者に分類されちまってる」

村儀の言わんとする意味がわかった佐藤は、さらに眉間のシワを増やした。

「まさか…村さんはあの子を疑ってるんですか!?」

思わず声が大きくなる。今度は村儀が眉間にシワを寄せて、佐藤を睨み付けながら口を開く。

「詳しい状況もなにもわかってねーのに、勝手に憶測で捜査しようとしてんじゃねえ!」

村儀の怒鳴り声があたりに響く。佐藤は納得がいかない、といった顔をしている。村儀は軽く舌打ちをすると、後ろにいた唯の方をみてきた。

「後でゆっくり話しは聞かせてもらう。いいな」

有無を言わせない村儀の言葉に、唯はただ黙って頷いた。
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