真夏の太陽


「十座!!」

十座の耳に声が降ってきた。

それは紛れもなく,愛しくてたまらない,和良の声。

聞き間違えるわけがない。

その声の先に目を向ける。

そこにはやはり,愛しい君の姿。

「和良」

「打たなかったら,十座の秘密ばらす!」

訳がわからない。

しかし和良は,十座のちょっとした表情や仕草の変化から,小さな緊張を読み取ったのかもしれない。

それは和良によって解かれ,十座はもう一度だけ和良を見つめる。

そして,ゆっくりと打席に入る。

ピッチャーに向かい,バットを掲げて。

「こい」

上座はピッチャーを睨みつける勢いで,バットを構える。

そしてピッチャーの指から,白い小さな球が放たれた。


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